心エコーの勉強でよく耳にする肺高血圧症(PH)。
心エコー検査に携わる人は是非知っておきたい病態です🍀🍀
心エコー初めての頃は画像を出すのに必死なので、病態の勉強は後回しになりがちですよね💦
肺高血圧症は心臓から肺へ血液を送る血管(肺動脈)の血圧が高くなる病態です。
肺高血圧症(Pulmonary Hypertension)は原因によって5つの群に分類されます。
第1群
肺動脈性肺高血圧症(Pulmonary Arterial Hypertension:PAH)
第2群
心臓の左側の疾患による肺高血圧症
第3群
肺疾患および低酸素による肺高血圧症
第4群
第5群
詳細不明な複合的要因による肺高血圧症
肺の血管抵抗が高くなると、肺に血液を送る右心系に負荷がかかります。
肺動脈圧の上昇➡右心負荷・右心肥大➡右心不全
2008年のダナポイント会議では、安静時に右心カテーテル検査を用いて実測した肺動脈圧の平均値が25mmHg以上の場合に肺高血圧症と定義され2013年のニース会議でも引き続きこの定義が採用されています。
正確な病態評価を行うため、右心カテーテル検査を用いた肺血行動態の直接測定が必要ですが、全例に実施するのは難しい施設も多く、心エコー検査で容易かつ非侵襲的に肺高血圧症の存在を推定するために、できるだけ真実に近い数字を算出できるように計測する必要があります。
肺高血圧症の自覚症状として、労作時息切れ・易疲労感・胸痛・失神・動悸・咳・喀血などがあります。
右心不全を伴うと、肝うっ血・消化管浮腫・腹部膨満感・食欲不振・下肢浮腫を示すようになります。
所見として、肺高血圧症に伴うⅡ音肺動脈成分の亢進・右心負荷に伴う傍胸骨拍動・三尖弁閉鎖不全に伴う胸骨左縁下部での汎収縮期雑音・肺動脈弁閉鎖不全の伴う胸骨左縁んでの拡張早期雑音(Graham Steell雑音)・右心性Ⅳ音の聴取などがあるそうです。
右心不全を呈すると、経静脈怒張・右心性Ⅲ音・肝腫大・下腿浮腫・腹水などが出現します。
肺高血圧症の原因疾患に伴う身体所見としては、アイゼンメンジャー症候群・肺静脈閉塞症・肺疾患でみられる ばち指・各膠原病・肝疾患でみられる諸身体所見・慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)でみられる肺動脈の血管雑音などがあるそうです。
【血液検査】
血液検査で肺高血圧症の診断をすることはできませんが、肺高血圧症と診断された患者において、重症度や臨床経過の評価、基礎疾患の診断のために行われます。
軽症では血液検査値に異常がないことが多い。
重症になり、右心負荷や右心不全が生じるようになると、BNPや NTproBNP、尿酸値が上昇する。さらに、うっ血肝を呈すると肝機能異常を示す。
基礎疾患の診断に有用な血液検査として、CDT-PAH(結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症)では各種自己抗体検査、CRP。門脈圧亢進に伴う肺高血圧症では肝機能・血小板・胆汁酸の測定。HIVが疑われるなら、HIV抗体の測定が必要になります。
また、肺高血圧症の経過中に甲状腺疾患を合併することも少なくないそうで、甲状腺の機能検査も必要とのことです。
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)が疑われる場合には、D ダイマーなどの凝固系マーカーやプロテイン C プロテインS などの血栓性素因。ループス・アンチコアグラントや抗カルジオリピン抗体といった血栓形成に関与する自己抗体を検索する。
呼吸機能が低下した患者や、逆シャントを有する先天性心疾患に伴う肺高血圧症患者では多血症が合併する場合もある。
【心電図所見】
軽症例では正常なこともある。
重症になると右心負荷による心電図変化が出現する。
肺性P波。右軸偏位。右室肥大(V1にR波増高)。右室ストレイン(V1~V3で右下がりのST低下)。QTc間隔の延長。QRS幅の拡大を呈するようになると、より重篤な肺高血圧症である可能性が高くなる。
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