男性の排尿障害の原因の一つに前立腺肥大があります。
今回は前立腺について🐣
前立腺は膀胱の下・恥骨と直腸の間にあり、尿道を取り囲んでいます。
一部は直腸に接していて、直腸の壁越しに指で触れることができます。
なので外からは見えません。エコー検査は前立腺を簡単に確認できる検査になります。
大きさは、栗やクルミほどの大きさと表現されることが多く約20(ml・㎠・g)ほどです。
私は、前立腺の大きさをグラム標記で所見に記入してましたが、受付の可愛い子がその所見をみて、「なんて過酷な検査をあの暗闇の部屋でされてるんですかぁ💦」と…(꒪д꒪II
前立腺を量りの上にのせて毎回量ってると思っていたそうですw😂😂
前立腺が体のどこにあるか説明しておきましたw
もちろん、そんな事はせず、エコーで体表から観察します笑
エコーでは膀胱の下に前立腺が描出されるので、膀胱にある程度の尿が溜まっていると観察しやすくなります。
とはいえ我慢の限界!!ほど溜まってると逆に見え辛くなるので、ほどほどの尿量が理想的。。
画像の黒く抜けてる所が膀胱で、尿が溜まっています。
計測してる部位が前立腺になります。
約80㎤ほどの大きさになります。計算は機械がしてくれますが、簡単には3か所の数字をかけ算して✖0.53をしてます。
上の画像だったら、5.0×5.7×5.3×0.53=80
球体の体積の省略式になります✨✨
前立腺肥大症は疾患としての定義が明確ではなく、ガイドラインには"前立腺の良性過形成による下部尿路機能障害"を呈する疾患と書かれています。
エコーでは肥大がないのに"前立腺肥大症"と疾患が記入されてるときもありますよね👀
前立腺のエコー検査では、大きさ・形状・左右対称か・内部エコーはどうか?を評価してます。
動画は前立腺癌のエコー所見です。
71歳、排尿困難にてエコー依頼
倦怠感。肘、肩甲骨痛あり。
前立腺は大きく、形状は不整で膀胱側・精嚢側への浸潤が疑われます。
前立腺のエコーレベルも低~高と不均一です。
前立腺癌の転移の約80%は骨で、なかでも背骨、骨盤、大腿骨の転移が多いと言われています。
MRにて右精嚢腺に進展する前立腺癌と骨転移と診断されました。
次は前立腺肥大のエコー像です
84歳。排尿困難にてエコー検査依頼
かなり大きく径6.4㎝✖8.1㎝✖5.4㎝で148㎠でした。
左右非対称で膀胱側への突出が著明でした。
何年もフォローしてましたが、生検や細胞診での悪性報告はなかったです。
膀胱には毎回残尿があり、尿沈渣でも桿菌が常に見られました。
【前立腺】
前立腺は辺縁領域(peripheral zone:PZ)・中心領域(central zone:CZ)・移行領域(transition zone:TZ)・前部線維筋性間質(anterior fibromuscular stroma)からなります。
内腺:移行領域と中心領域
外線:辺縁領域
一般に良性の前立腺肥大症は移行域から発生し、前立腺癌の約70%は辺縁領域から発生するそうです。
【臨床的な前立腺肥大症】は、前立腺腫大・下部尿路症状・前立腺性下部尿路閉塞の3要素により構成され、加齢などによる膀胱平滑筋の収縮障害や尿道の知覚神経の興奮などで生じると言われています。
合併症として、尿閉・血尿・膀胱結石・尿路感染症・腎後性腎不全などがあります。
前立腺による尿道抵抗(閉塞)には前立腺腫大による機械的閉塞と、平滑筋の収縮による機能的閉塞があり、膀胱内に尿が充満していにも関わらず、尿が出せないという苦しい状態になります。
尿閉は前立腺肥大が高度なほど起こりやすく、飲酒・服薬が要因として高頻度との事。
また尿を我慢しすぎたり、胃カメラを行う前に胃の動きを止める注射(ブチルスコポラミン臭化物)が尿閉を引き起こすことがあると言われています。
血尿は前立腺肥大のために、尿道粘膜の充血が起こり、前立腺部の尿道粘膜から出血して血尿が出やすくなります。
膀胱結石・尿路感染は膀胱内に常に残尿があることにより生じやすくなります。
また、溢流性失禁といって膀胱に尿が充満している状態で少しずつ溢れてしまうこともあります。
膀胱緊満により腎臓から膀胱への尿の流れが妨げられ、水腎症や腎機能障害が起こります。
【前立腺癌】
一般的に50歳以降に発生し、加齢とともに発症率は増加します。
前立腺癌の腫瘍マーカーとして、血中PSA(前立腺特異抗原)の測定検査が有用です。PSAは前立腺に特異的な蛋白質で精液の安定化の役割として一部は血中に流れています。
PSAは非常に敏感な腫瘍マーカーといわれ前立腺癌の早期発見に必須です。
また癌の局所伸展や転移と相関し、治療効果の判断に有用です。
基準値は4ng/ml以下で、4~10ng/mlは"グレーゾーン"です。
正常値よりも高値だからといって必ずしも前立腺癌であるとは限りませんので他検査で精査してください。
早期癌:前立腺癌の約70%は外腺部(辺縁領域)から発生するため、早期癌では無症状です。内腺部(移行領域)に発生した場合、尿道を圧迫し排尿困難、頻尿、残尿感、夜間頻尿、尿意切迫感、下腹部不快感などの症状が認められることがあります。
局所進行癌:癌が尿道、射精管に浸潤することで、血尿などの症状が認められることがあります。
転移癌:前立腺癌は進行するとリンパ節、骨(特に胸腰椎、骨盤腔)に転移しやすく、下肢のむくみや下半身麻痺を起こすことがあります。
前立腺癌の病期分類(TNM分類)は少し複雑で、T:原発腫瘍。N:リンパ節転移。M:遠隔転移。によって癌の進行度を分類します。
T:原発腫瘍
T1:触知不能、または画像診断不可能な臨床的に明らかでない腫瘤(T1a~T1c)
T2:前立腺に限局する腫瘤(T2a~T2c)
T3:前立腺被膜をこえて伸展する腫瘍(T3a~T3b)
T4:精嚢以外の隣接組織に固定、または浸潤する腫瘍
N:所属リンパ節
N0:所属リンパ節転移なし
N1:所属リンパ節転移あり
M:遠隔転移
M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり
ヨーグルト好きな人は前立腺肥大になりやすいって聞いたことがありましたが、全然関係なさそう💦笑笑
腹部エコーする時に、ついでに前立腺も観察してみてください👋✨